ままぱんの育児ブログ(仮)

ままぱんと息子べび男の日々を綴ります

カメの話

飼っているカメが懐いてきた。


1年半くらい前に、家の前で拾った。500円ほどの小さなミドリガメだ。
拾ったとき、私はベビーカーを押していた。うわーうんこだ、と思って避けたのが、我が家の可愛いカメさんである。

我が家のベビーカーは親戚からの頂き物で、なんとびっくり、7万円ほどする見事な代物である。タイヤに空気を入れるタイプで、赤ちゃんに伝わる振動が少ないらしい。
そんな素晴らしい機能と素晴らしいお値段のベビーカーで、絶対にうんこなんか踏みたくない。息子を初めて乗せたときから私はその一心で、目を皿にしてうんこを探しながら毎日ベビーカーを押していた。


1年半前、私たち一家は引っ越しがやっと済んだところだった。
引っ越しに際して私は、あまりの手続きの多さと荷物の片付かなさに心が針穴ほどに小さくなり、些細なことで夫にキレ散らかしていた。
と言っても面と向かって当たり散らす意気地はないので、キレてだんまりを決め込む私とイマイチ状況が飲み込めない夫との冷戦状態であった。

今でこそ笑って振り返れるが、私の心は本当にどうしようもない状況だった。
夫と喋りたくない、息子も言うこと聞かない、っていうか私の言うことが分かってんだか分かってないんだかそれもよく分からない、あーそれは夫もだわ、もう無理、みたいな。私がちゃんと言わないからいけないのだけれど。察してほしいじゃん、乙女だし。
とにかく雰囲気は最悪だった。


そんなときだ。カメを拾ったのは。


息子を散歩に連れ出すため、家族で家を出た。私は上述の通りうんこを探しながら出発すると、家の目の前にうんこがあるではないか。(さっきからうんこうんこ言ってごめんなさい)

うわーうんこだ、しかも家の前じゃん、え。
え?まる!

まんまるだったのだ。
さすがの私もここで、これはうんこではないぞと気づいた。なんの生き物が人間の家の前できれいなまんまるうんこをするというのだろう。そんなのんびり脱糞するなんて、油断しすぎである。そのような生き物は自然界では生きられないに違いない。


では何かと思い立ち止まってよく見たら、まんまるいのはカメの甲羅だった。それは夏になりかけた季節の日差しをもろに浴び続けたようで、からからに干からびていた。
小石でちょんとつつくと、引っ込めていた首がもっと引っ込んだ。あ、生きてる。


ちょっと嬉しかった。それは、死骸じゃなくてよかったという心ない安堵でもあったし、新しい家族が増えるぞという嬉しさでもあった。生きてるとわかった時点で、飼うことは私の中で決定事項だった。


夫は、さっきまでぶんむくれて口もきかなかった妻が、干からびたカメを捕まえててきぱきと飼う支度をしているのを見て遠くからぽっと「名前考えないとなー」と言った。久々に、この人と結婚してよかった、と思った。




そのときのカメが、最近ようやく懐いてきたのだ。

あのときベビーカーに乗って夫とともにぽやんとしていた息子は今ようやく、椅子によじ登ってカメにエサをやれるようになった。
カメがエサをもらいに来る。
息子は不器用にエサを握りしめ、ぽろぽろこぼしながらも水面にまく。
カメはじたばたと喜び、息子は「カメ!もぐもぐ!」とやはりじたばたする。



実は息子は、他の子と比べると成長がゆっくりめだ。親としてはそれに焦ることも多い。特に子どもが寝静まり、日記を書きながら1日を振り返ると、うまくいかなかったことの方にフォーカスしがちになる。

けれど、残った力を振り絞って首を引っ込めていた干からびたカメだって懐いた。
ベビーカーでぼうっと座っていた息子だって、自分で椅子によじ登るようになった。


2人ともまだまだ不器用だけれど、不器用なりに時間を重ねて、少しずつ、けれど確実に前に進んでいる。

やっと懐いた我が家のカメを見ると、そのことを思い出しハッとさせられる。



私も下を向いてうんこばかり探していないで、前を見て生きていかなきゃな、と思う。